❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
これが本物の銃であったならば不穏でしかないが、手にしているのは人畜無害な水鉄砲である。何処となくそのミスマッチさが愛らしく見えて、凪はゲーム中だというのに若干ほっこりと和んだ。
「三成、残り二十を切った時点で合流するとしよう」
「畏まりました。では彼方様、参りましょう」
「オッケ。凪、健闘を祈るー」
「二人共頑張ってねっ」
光秀の声がけにより一度三成、彼方の二人とは別行動を取る事になった。三成が彼方を伴い、周囲を探って別の障害物の影に隠れたのを見送り、凪が改めて光秀を見上げる。先程からアナウンスが止まっているところを見ると、どのチームも様子を窺って膠着状態が続いているという事なのだろう。
「私達も行きますか?」
「そうだな、動きの無い戦場を少々かき回す。そうする事で焦燥と恐怖に駆られた者達も注意力散漫なまま、つられて動き出すだろうからな」
(……光秀さんと同じチームで本当に良かった、うん)
凪が窺えば、光秀が緩く口角を持ち上げた。刺激を与えて引っ掻き回し、慌てふためく者達同士で潰し合わせる策に出るという男の発言に、彼女はつい内心で苦笑する。改めて、しみじみ光秀が敵でなくて良かったと思い直し、二人も三成達に倣って静かにその場を動き出したのだった。
──────一方その頃、武将と忍び五人チームにて。
秀吉、家康、兼続、幸村、佐助の五人は光秀達が潜んでいた場所とは真逆の位置、大きなサーフボードが三枚程横に並んで砂浜に突き刺さっている、その影に身を潜めていた。迷彩柄のライフルを片手に、佐助が眼鏡のブリッジをくいと押し上げると、現状報告をチームメイト達に共有する。
「俺達が居る近辺に敵の姿はありません。主に中心地で幾つかの銃撃戦が繰り広げられているみたいです。ただ、お互い上手く身を潜めている関係で、先程から討ち死にする人の数も増えていないようですね」
「他の連中はともかく、注意するのはあの人でしょ。何処から狙撃されるか分かったもんじゃない」