❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
彼方と三成の元へ向かいながら、ふと凪が思い出したように隣を歩く男を見上げた。
「そういえば光秀さん、上着脱がなくて大丈夫ですか?」
「おや、出し過ぎは駄目と言ったのは何処の誰だったか」
「わ、私ですけど…濡れちゃったら嫌かなと思って…」
「それは心外だな」
白いパーカーを着たままである光秀へ確認するように問うと、彼が軽く片眉を持ち上げてわざとらしく問いを投げ返す。確かにジッパーを開けていた光秀のそれを締めたのは他でも無い凪であったが、この遊戯で万が一濡れてしまってはと懸念したのである。けれども、彼女の言い分を耳にした光秀が瞼を伏せて吐息混じりに笑いを零した。きょとんとした面持ちで顔を上げ、大きな眸を瞬かせる凪へ、瞼を持ち上げた光秀が視線を流す。口角が余裕と自信によって持ち上げられた様を見て、彼女の鼓動がきゅっと跳ねた。
「水に濡れるような事態にならなければいいだけの事だろう」
(つまりそれって、誰にも撃たれないって意味だよね。でも光秀さんならなんか有り得そう…!)
そんな頼もしい後世に名を知られる銃の名手と共に彼方達と合流した凪達は、二人が身を潜めていた後方の木の板の裏へと潜みつつ、ゲーム開始の合図を待ったのだった。
今回のウォーターガンサバゲーの参加チームは全部で十組であり、四人チームが七組、五人チームが三組の、計四十三人によるゲームとなるらしい。事前に情報を得ていた彼方の調べを耳にして、三成は天使の如き顔に若干似つかわしくない黒光りするアサルトライフル型の銃を片手に持ちながら、思案を巡らせる。
「三組ある五人編成の組の内、一組は秀吉様や家康様達です。出来るだけここへ当たらないようにした方がいいでしょう」
「な、何か三成くん…いつもよりも活き活きしてるね」
「織田軍の頭脳のお手並み拝見といったところだな」
「え、何か本物の戦並な雰囲気出ててエモいんだけど」