❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
サバゲーは娯楽の一種で、戦国時代程の重みを持った戦をする訳ではない。ひとまず本気の戦でない事は理解したものの、幸村の突っ込み通り、砂浜では動きも多少鈍るというものだ。逆に足腰が鍛えられそうだが、生憎とこの場に鍛え足りない男は誰一人として居ない。
「ここのサバゲーは本物のサバゲーじゃなくて、あくまでも海だから使う銃はウォーターガン限定。弾代わりの水のタンクが空になってもリロード、追加補充は無しってルールらしいよ」
「普通のサバゲーよりは平和だね、使うの水鉄砲だし」
「水鉄砲…?」
「引き金を引くと弾の代わりに水が出るんですよ、兼続さん」
彼方の説明を耳にして、凪が相槌を打った。耳に慣れない単語に柳眉を寄せた兼続へ、凪が振り返って手で鉄砲の形を作ると、それを彼へ向けてぱん、と撃つ素振りを見せる。軽く藤の目を瞠り、どうにも想像に及ばないものへ若干の興味を覗かせていれば、佐助が彼方へ振り返った。
「サバゲーと聞くと基本は個人戦のような印象だけど、ウォーターガンサバゲーもそうなのかな、彼方さん」
「んー……あ、違うみたい。四人から五人程度のチームに分かれて、ある程度の人数が集まった時点でゲーム開始らしいよ。一度水に当たったらその時点でアウト、つまり討ち死に」
「不名誉な傷を負う遊戯だね」
佐助の問いを受け、スマホへ視線を落とした彼方がサイトを確認すると、チーム戦である旨の記載が書かれていた。家族連れや友人同士、あるいはカップル同士で楽しめるようにという仕様なのだろう。ビーチで恋人同士が撃ち合うのは、正直いかがなものかと思う。その点、チーム戦であればそういった懸念も無くなるというものだ。一度当たればアウト、というルールはサバゲーと変わらないらしい。彼方が武将達にも分かりやすく伝わるような言葉選びをすると、家康が如何にも嫌そうに眉根を軽く寄せた。
「チーム戦かあ、良かった…個人戦だと生き残れる気がしないよ…」
「個々で戦うというならば、周りを全て狩り尽くした後、じっくりとお前を追い詰めてやれると思ったんだが、残念だな」