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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



光秀から凪が受け取ったのは、先程海の家で買って来たかき氷であり、それが陽射しや気温の所為で溶け始めている様を目にし、窺うように彼女が問いかける。鷹揚に頷く光秀へ口元を綻ばせ、凪がストローと一体になったかき氷用のスプーンでさく、と氷を混ぜた。薄っすらと淡い乳白色をした蜜は桃シロップと練乳であり、周りには白桃と黄桃がカットされたものが添えられている。ふわふわと淡雪のような柔らかい氷と蜜を一緒にすくい、光秀へ差し出した。

「まずは光秀さんからどうぞ」
「お前から食べるといいと言っても、その顔は聞きそうにないな」
「御名答、です」

凪が期待のこもった眼差しを向けて来る様を前にして、光秀がふと苦笑ともつかない表情を浮かべる。頑として譲ら無さそうな雰囲気が滲む彼女へ、あながち冗談でもない調子で告げた。光秀の返しを真似ているのか、笑みを浮かべたままで凪が肯定すると、男がやれやれと肩を竦める。そうして、差し出された桃味のかき氷を口へ含んだ。ひんやりとした感覚が口内へ広がり、すぐに中の熱で溶けて行く。舌先に残るのは冷たい名残と、甘い蜜だけだ。

「冷たくて甘いな」
「ふわって消えませんでしたか?」
「春先の雪解けよりも呆気ないが、悪くはない」
「良かった…!」

光秀の唇に柔らかな弧が描かれた様を目にし、凪が問いかける。黒々した眸が陽光を浴び、好奇心に輝いているのを見て取り、男は瞼をそっと伏せつつ思うがままを口にした。気の利いた言葉ひとつ言えない己に対し、それでも心底嬉しそうに笑う彼女が愛おしくて、凪の手からそっとスプーンを取ってやる。彼女の手にある器の中身をさくりと混ぜ、淡雪と蜜、そして彼女の好む水菓子を一欠片乗せると、それを同じように差し出した。

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