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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



その輪の中に混ざり、凪達が買ってきた料理のパックを手渡して行く。透明なパックの中は、エビやホタテ、イカなどとチンゲン菜等が具材として入った海鮮塩焼きそばが入っていて、透明パックにアルミホイルが敷かれた中には、サザエの壺焼きやホタテのバター醤油焼き、イカ焼き等が入っている。割り箸と持参した使い捨ておしぼりを渡した後、凪の隣に座っていた兼続が、蓋付きのプラスチック容器にストローが差された状態のアイスミルクティーを彼女へ差し出した。

「お前の分だ」
「あ、ありがとうございます…!兼続さんが選んでくれたんですか?」
「……ああ、先日の妙な店でも飲んでいただろう」
「私、こっちだとこればっかりなんです」

兼続から容器を受け取り、凪が笑みを浮かべて礼を紡いだ。特に飲みたいものをリクエストした訳でないにも関わらず、ミルクティーを選んでくれた事実へ素直に驚いた凪が、隣へ座る男へ視線を向ける。彼女の純粋な疑問を孕んだ眸を前に、兼続は平坦な調子で応えると、傍らに置いていたものを手に取り、凪へ差し出した。咄嗟に掌を相手へ向ければ、その上へころりとガムシロップの入れ物が二つ、優しく落下して来る。

「実はこれも、いつも二つ入れるんです」
「そうしていたな」

半透明なガムシロップの入れ物を目にし、凪が目を瞬かせた後で兼続の方へ顔を上げた。嬉しそうにはにかんだ彼女へ平坦な相槌を打ち、兼続はふと凪の顔をじっと見つめる。傍で視線を感じ、黒々した猫目を瞬かせた彼女が相手へ意識を向けると、不思議そうな表情を浮かべた。

「どうかしました…?」
「その如何にも浮足立った様、まるで好物の骨を与えられた仔犬のようだな」
「骨…!?」
「棒を投げたら勢いで取りに走りそうだ」
「そんな事しませんよ…!」

肌を晒さないかの如く袖の長い濃紺色のパーカーをしっかりと着込んだ兼続が、切れ長な藤の眸を眇めて何処か意地悪く笑んだ。

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