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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



普段の買い物で、自分の欲しいものを即座に把握されてしまう事を経験上知っている凪は、繋いでいる男の手を軽く引いて意識を向けようとする。

「光秀さん、かき氷はんぶんこしませんか?」
「ああ、お前がそうしたいならばそうするとしよう。ほら、ちょうどお前の好きな桃が品書きにあるぞ」
「う……、それは…!」

一人ではどの道全て食べきる事など出来ない。光秀と半分ずつがちょうどいいと誘いをかければ、男が口元を微かに綻ばせて了承の意を示した。そのままかき氷器が置かれている付近に貼り付けられた、幾つもの種類の中から桃味を見つけると、意味深に視線を流してくすりと密やかな笑いを零す。はっとして品書きを見ると、光秀でも読める字でしっかり桃と書かれており、じわりと凪が耳朶を赤く染めた。

「あれ、凪ってそんな桃好きだったっけ?甘いの好きなのは元からだけど」
「凪様は桃がお好きなんですね。蘭丸殿も、桃が好きだと以前言っていましたよ」
「蘭丸って森蘭丸!?桃が好きって可愛くない!?さすがは歴史に刻まれし美少年、食の好みもあざと可愛いわ……」

桃好きと耳にして彼方が不思議そうに首を捻る。聞いた事がないと彼方が目を瞬かせる中、三成がまったく悪意の無い笑顔で告げた。かの織田信長が気に入り傍に置いたという絶世の美少年小姓、森蘭丸の名が飛び出した事へ、半ば興奮気味となった彼方が、尊さを噛み締めるように眉間をぐっと押さえた。そんな二人の反応へ困窮した様子で眉尻を下げ、凪が傍に立つ光秀へ抗議の眼差しを向ける。

「どうした、凪」
「どうもしませんっ」

分かっているくせに、わざと問いかけて来る意地の悪い恋仲へ唇を引き結び、凪が視線をふい、と逸らす。けれども繋いだ手は絡んだままであり、指先から伝わってくる熱に、光秀はそっと吐息混じりの笑いを零したのだった。



無事料理を買い付け、自分達の場所へ凪達が戻った頃には、先に飲み物などを買いに行っていた面々が戻っており、レジャーシートの上へ車座になって座っていた。

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