❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
男の口元へ薄っすらとした微笑が刻まれている様を垣間見た凪は、それが何となく光秀の良く見せる悪い顔の類に見えて、彼がボールを向けた先へ視線を投げた。
「三成」
「はい、お任せください」
「ちょっと、光秀さんあいつは……」
ご指名を受けた三成が気合い充分に光秀からのボールを受ける為、構える。けれどもそれを目にした家康が仄かに焦燥し、光秀を責めるように一瞥した。光秀の、まったく危なげないボールを受けた三成がとん、とそれを上げる。放物線を描く球体がふらふら揺れて狙いとは真逆、明後日の方向へ向かい、三成が声を発した。
「家康様……あ、いえ、秀吉様…!」
「何処に向かって言ってるんだ、三成!?」
ふらふらしたボールは家康と秀吉のちょうど真ん中辺りへふわふわ落下し、飛沫を上げて軽く走った秀吉が片手で辛うじてトスを真上へ上げる。
「家康…!」
「はあ……何なんですか、この蹴鞠もどき」
真上に上がったボールが自らの頭上へ落下して来るのを見やり、家康がパスした。ぽん、と綺麗に放物線を描いたそれが再び三成の方へ向かっていき、遅れて家康がその名を呼ぶ。
「三成」
「お任せください、家康様。…あっ」
咄嗟に構えた三成の目前でボールが海へ落下する。ぱしゃんと微かな音を水飛沫を上げたそれへ、三成が申し訳無さそうに眉尻を下げた。
「三成くん、惜しかったね…!」
「まあそういう事もあるある。てか皆呑み込み早過ぎない!?運動神経の塊か。さすがは武将」
「そこ武将関係あるの」
海面を揺らいで転がって来たボールを凪が拾い上げ、三成を励ますように笑いかける。三成の隣に居た彼方も同調してからりと笑い、一度目にしただけで容易に適応した武将達へ驚きの眼差しを向けた。感心した様の彼方を目にし、家康が呆れとも何とも言い難い調子で溜息を漏らす。凪をしっかりと直視した事で、水着に対して色々と吹っ切れたらしい家康は、もう露出の多い姿を見ても何とも反応を示さなくなった。そういった様々な面から見ても、割と戦国武将達は適応能力が高い。