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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



「じゃあ仕切り直しでもう一回!今度ボール落とした人は、全員で海に沈められる罰ゲームね」
「あのぼーるとかいう物を落としただけで、水攻めに遭うのか……こら彼方、若い女がそんな物騒な事を口にするもんじゃない」
「備中高松城を水攻めしたのは秀吉さんの方でしょ」
「な、何故お前がそれを知ってるんだ!?」

もう一度やろうと彼方が声をかければ、凪がその友人に向かってボールをトスする。物騒な罰ゲームが唐突に追加され、秀吉が小さく呟きを零した。彼方の手によって柔らかな球体は綺麗に放物線を描いて秀吉の元へ行く。誰も水攻めとは一言も言っていないが、海に沈めると言われればそのように連想してしまうのは、戦脳だからなのだろうか。咎められた事に対してまったく意に介さず、彼方がしれっと言うと、若干動揺した秀吉の上げたボールが凪の方へ、割と強めに飛んで行った。

「すまん、凪!」
「大丈夫…!あっ!?」

軽く後方へ下がりつつ、秀吉の謝罪へ笑って応えた凪が手を上げるも、海底の海藻か何かに足を取られて体勢がぐらりと傾く。小さな声を上げて海へ倒れ込みそうになった瞬間、背に堅い胸板の感触を覚えて目を瞬かせれば、光秀が片腕で彼女の身体を背後から支えていた。

「やれやれ、可愛い妹分を苛めるとはとんだ兄だな。ここはひとつ、仇を取ってやるとしよう」
「え」

(何か嫌な予感!?)

背後から聞こえるしっとりと潤った低音が、仄かな揶揄を秘めて零される。礼を言うより先に小さな音を漏らした凪が、背後を僅かに振り返ると、迫り来るボールを光秀が片手でぱしん!と鋭く打ち返した。

「ほら、ぼーるだ。受け取れ秀吉」
「おい光秀、お前何処狙って…!」
「まさかのスパイク」

容赦の無い打ち返しはパスと呼ぶには攻撃的過ぎる。佐助が真顔で突っ込むのを余所に、びゅん、と一直線に秀吉の元へ凄まじい速度と勢いで飛んで行ったボールが、彼の真正面の海面へ叩きつけられ、飛沫を散らした。ばしゃん!と水の跳ねる涼やかな音が響き、輝く水滴が辺りに弾ける。

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