❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
珍妙な生き物から手を離させ、凪を自分の方へと抱き寄せた。軽く奥へ進むと、更に深度が高くなった事へ驚き、凪が光秀の首裏へ両腕を絡める。
「も、足着かない…、光秀さん、鮫、流れちゃう」
「俺よりもこの珍妙な生き物の方を頼るとは、悪い子だ」
すっかり足が底へ着かなくなった凪が告げると、しっかり彼女の身体を片腕で抱きしめ、反対の腕で流れそうになったジンベイザメの頭部分についている紐を手にし、引き寄せた光秀が耳元で囁いた。
「だって、浮き輪ってそういうものですし……それに光秀さん、疲れないですか?」
「浮力があるからな。普段以上に軽く感じる」
ひんやりした海の中、二人の肌が重なった。凪の薄い腹と光秀のしなやかな体躯が触れ合い、互いの存在を伝え合う。腰へ回した腕でしっかりと彼女を抱き留め、凪の頬へ唇を寄せた。飛沫が軽く跳ねた所為で、淡く染まった頬はほんのりと塩辛く、普段は何ら感慨を運ばない舌先に記憶を刻み込ませる。
「さっきちょっと水かかっちゃったから、しょっぱいですよ」
「…ああ、海の味がする」
凪が楽しそうに、またくすくすと笑った。耳に心地よい音を聞きながら、光秀も金色の双眼を柔らかく眇める。海の中はひんやりしていて心地よいというのに、触れ合っている肌は何故か暖かい。ジンベイザメがゆらゆら波に揺れ、海面が反射してキラキラ輝く。その光の中で笑い合える事実へ光秀は瞼を伏せ、もう一度凪の頬へ唇を寄せた。
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二人でゆっくり海の冷たさや潮の香りを楽しんだ後、凪と光秀が波打ち際よりも少し奥辺りまで戻ると、彼方や佐助、武将達がそこに居た。凪の身長でおよそ腰くらいまで浸かる場所で、彼方が両手に柔らかいビーチボールを持ちつつ、彼女へ振り返る。
「あ、ちょうどいいところに!呼びに行こうと思ってたんだよね。これ、皆でやらない?」
「いいね…!あ、でもやり方皆分からないよね」