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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



すらりとした高い背へ庇われ、きょとんとした様子でいた凪は、光秀の片腕に両手を添えると相手の顔を後ろから覗き込んだ。金色の眸が真っ直ぐにこちらへ近付いて来るライトへ向けられており、警戒を滲ませている様を前にして、凪は何故か無性に光秀が可愛く見え、ついぽつりと零す。

「…………光秀さん、かわいい」
「どうやら俺の愛らしい連れ合いは、お仕置きをご所望らしい」
「ごめんなさい」

鼓膜を揺らした凪の小さな発言に、光秀がちらりと視線だけを寄越して来た。形の良い唇にそっと笑みを刻み、意味深な流し目を送って来る相手へ即座に身の危険を感じた凪が謝罪を述べている間に、聞き覚えのある機械音────即ちエンジン音と走行音がこちらに向かって近付いて来る。

「おい、妙な箱が近付いて来るぞ」
「秀吉さん、刀を抜くのはどうか控えて下さい。あれはバスといって乱世で言うところの駕籠(かご)のようなものです」
「あれ程大きな駕籠であれば、一度に何人も運べそうですね。ですが、駕籠者(かごもの)はどちらにいるのでしょうか…」

通りを進んでこちらへ向かって来るバスへ向けて、秀吉があからさまな警戒を滲ませた。刀の柄へそっと手をかけようとする姿を見て佐助がすかさず制止し、説明を加える。駕籠と耳にした事で些か驚きを覗かせた三成は、駕籠の担ぎ手である駕籠者が居ない事へ不思議そうに首を傾げていた。ライトが点灯した大型バス。客の乗っていないそれが、こんな深夜に通りを走っているのは明らかにおかしい。回送でもないであろうそれへ佐助がとある可能性に辿り着くと、凪へ振り返る。

「凪さん、もしかしてこのバス…」
「うん、多分そうみたい…」

よもや一般的な普通のバスが迎えに来ようとは。思わず苦笑した凪の予想に違わず、やがてそのバスは本能寺跡石碑の前で停止し、エンジンを一度切った。よくよく見ると、バスは黒塗りで何処となく高級感を思わせる。

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