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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



「まあ待て秀吉、そう目くじらを立てる事も無いだろう。お前も既に気付いているだろうが、こちらではこの格好が通例だ。郷に入っては郷に従えの言葉通り、それに倣う方が目立たずに済む」
「だがなあ……」

光秀がフォローに入ったのは、秀吉に怒られたからという理由で凪が肌を隠すのが気に入らない、というものなのだが、そんな事は本人達になど分かる筈もない。すらすらと並べ立てられるもっともらしい発言へ、静観していた佐助が関心し、秀吉も小さく唸る。次いでとどめとばかりの言葉を、敢えて口角を持ち上げつつ告げたところで、秀吉の眉間にいっそう深い皺が刻まれた。

「それとも、お前は大事な妹分をいやらしい目で見ているのか?それならば隠せと言うのも理解出来る。当然、俺としても看過は出来ないがな」
「なっ………お前は次から次へと適当な言葉を。凪、俺が悪かった。確かに肌は晒し過ぎではあるが、その格好、凄く可愛いぞ。よく似合ってる」
「ええ!?あ、ありがとう…?秀吉さん」

絶句した様子で言葉を詰まらせ、すぐに苛立たしげな顔で光秀を一瞥した秀吉であったが、やがて気を取り直したように凪へ向き直る。いつもの柔らかな人好きのする笑顔を向けて、改めて彼女の格好を褒めてやると、驚いた凪が首を傾げつつもはにかんだ。

「秀吉さんていつもこんな感じ?安土で毎日苦労してそうだわー」
「秀吉様と光秀様は、共に信長様をお支えしていらっしゃる立場ですから、ご覧の通りとても仲がよろしいのです」
「そう見えてるの、三成くんだけだと思うけどね……」

光秀と秀吉、そして凪のやり取りを眺めていた彼方が小さくぼやく。安土は当然として、現代でも既に見慣れた光景であるが、それ故に色々と懸念が過ぎる。隣で話を耳にしていた三成が、尊敬の眼差しで信長を支える左右の腕をそれぞれ見やった。曇りも偽りも無い様子で紡がれたそれへ苦笑し、彼方が肩を竦める。

「だが、海に入って寒くなったらすぐに上着を着るんだぞ」
「はい、気を付けますね」

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