❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「基本見せたい派の彼方が大人しくパーカー着るなんて……」
「ほう……?三成はそういった類いには疎いものと思っていたんだがな」
互いに感想を零し合い、光秀が片手を自らの顎へあてがいつつ、彼方の着ている三成の薄紫色のパーカーを見て、凪へ顔を向けた。そうして自身の白いパーカーを指先でくい、と軽く摘んで凪へ声をかける。
「お前も着るか?」
「駄目っ、光秀さんがちゃんと着てて」
「やれやれ、仕方のない娘だ」
「はいそこ、隙あらばイチャつかない!」
問われた言葉に凪が首を左右に振り、摘んでいたパーカーを離させた。そのまま彼女の手をさり気なく取って指を絡めるようにして繋ぎ、光秀が言葉通り、仕方無さそうに甘く微笑する。そんな二人へ即座に突っ込んだ彼方へ、はっと凪が正面へ向き直った。薄紫のパーカーを彼方が着る代わりに、三成の均整の取れた体躯が露わになっている。書庫や自室へこもる事が比較的多い所為だろうか、日焼けをあまり知らない肌が晒されていて、そちらはそちらで見てはいけないものを見ている気分だ。
「こら、幾ら物珍しいからといって、他の男ばかり映すのは関心しないな」
「そ、そういうつもりじゃ……」
「ところで二人共、さっき群がってた水着女子達はどうしたの?」
凪の視線の先を察し、光秀があくまでも笑みを浮かべたまま甘く咎める。慌てて三成から隣の光秀へ意識を戻し、言い訳を紡いだ。フラグナンパ男から救って貰えた事は純粋に有り難いが、果たしてあの水着女子の厚い壁はどうなったのか。彼方が片手を腰にあてがって問えば、光秀がああ、と短い相槌を返す。
「もうじき来る頃だろう」
「お待たせしました。無事先程の女性達は撒いて来ました。主に秀吉さんが」
「光秀……お前自分だけ都合よく姿眩ましやがって……今度囲まれたらお前が女達をどうにかしろ」
光秀が何処となく可笑しそうに笑うと、佐助が二人の元までやって来て淡々とした調子で報告を述べる。更にその背後からやたらと疲労を滲ませた秀吉が現れ、涼しい顔で佇む光秀をじろりと睨んだ。