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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後



不服そうな面持ちを浮かべる凪の意図を察し、光秀が長い睫毛を伏せて笑みを零す。

「光秀さんも、出し過ぎは駄目」
「中々に可愛い事を言ってくれる」

紡ぎつつパーカーを軽く握った凪へ、眸を覗かせた光秀が両手で彼女の頬を包み込んだ。そのままくい、と上を向かせると、男が覗き込むようにして囁きを落とす。黒々した猫目には不服の色がありありと滲んでいて、それが彼女の独占欲から来るものだと察した光秀の内側が鈍く疼いた。こうして感情を素直に露わにしてくれるのは、光秀とて嬉しい。何より、自分が凪のものなのだと顕著に感じる事が出来、それが堪らなく心地よいのだ。包み込んだ手、その親指で頬を撫でやり、目前にある濃いめの桜色を乗せた唇へ吸い付きたい衝動に駆られるも、それを堪えて、代わりに額へ口付けた。

「ん、」
「残念だが、今はこれで我慢するとしよう」
「お、おでこもちょっと恥ずかしいです」
「それは致し方ないと諦める事だ。この場で茹で蛸になりたいなら、話は別だがな」
「もっと駄目っ」

額へ唇が触れた瞬間、凪が瞼を伏せて小さな声を漏らす。片手で再度頬をひと撫でした後、顔を上げさせていた両手を下ろした光秀が、冗談めかした調子で告げた。唇程ではないが、周りの視線を気にした凪が目元を染めると、男が微笑して緩く肩を竦めて見せる。意味深な流し目を受けると鼓動が小さく跳ね、首を左右に振った凪が異を唱えた。

「はいはい……海でも相変わらずバカップルだわ。いっそ微笑ましいから別にいいけど」
「光秀様と凪様は本当に仲がよろしいですから。……ところで、彼方様」
「んー?どうしたの」

そしてそんな一連のやり取りを半眼で見ていた彼方が胸前で腕を組む。二人のバカップル振りは既に嫌と言う程知っているので、もはや耐性がついたらしい。彼方のぼやきに笑顔で頷いた三成が同意し、ふと何か言い淀むように視線を逸らす。不思議そうな表情で切れ長の目を瞬かせた彼方を前に、三成は白い肌をほんのりと朱に染め、告げた。

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