❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
先程までは色々あってすっかりタイミングを逃したが、改めて光秀の姿を目にすると、凪が心の中でしみじみ呟く。戦国武将の名に恥じぬ均整の取れたしなやかな身体は、当然無駄な筋肉も脂肪も一切存在しない。すらりと伸びた手足が水着とパーカーによって強調され、光秀らしい白の色合いが、色素が薄めな肌の色と髪をいっそう惹き立てている。ただそこに佇んでいるだけでこの色気なのだから、それは水着女子も数多押し寄せて当然だ。光秀の肌を知らない訳ではないが、普段着物で隠されている箇所が露わになると、こんなにもいけないものを目にしている感覚に陥るのだから、本当に困る。
(うう、何着てても格好いいとか、ずるい……)
どきどきと逸る鼓動を必死に落ち着けつつ、凪が再度光秀を見た。果たしていつから彼女を見ていたのか、ぱちりと視線がぶつかり合った瞬間、光秀が吐息混じりに笑いを零す。ぎゅっと心臓が締め付けられる感覚に今一度襲われ、反論めいた様子で眉根を寄せた瞬間、傍を歩いていた大胆な水着女子が光秀を見て密やかに黄色い声を上げた。
「あの人凄い格好良くない?」
「えー、パーカー着てるの勿体なぁーい」
「!!」
はっとした様子で眸を瞠り、光秀の開けられたままであるパーカーを見る。上からそれを羽織っている所為で、しなやかな体躯が惜しげも無く晒されている訳ではないが、前を開けた状態から覗く腹筋などは隠しようも無かった。水着女子達の視線が光秀の身体へ注がれている事実に、胸の奥底がもやもやと燻る。海へ来ておきながら、こんな感情に苛まれるなど、どうかしていると自分でも分かっているが、それを完全に飲み下してしまう事は出来なかった。一歩近付き、両手をおもむろに持ち上げる。一体どうしたのかと光秀が目を瞬かせる中、白いパーカーの裾を凪が掴んだ。
「凪…?」
光秀が彼女の名を口にした瞬間、凪が無言でジッパーを噛ませ、それを半ばまで上げる。薄い線が刻まれた腹筋は真白なパーカーに隠され、胸も普段の着物の合わせから覗く程度のものになった。