❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
愚痴を漏らしつつ、別の女性を引っ掛けに向かった後ろ姿を見て、三成は実に不思議そうな面持ちで目を瞬かせた。
「行ってしまわれましたね……何か御用があったのかと思ったのですが、良かったのでしょうか?」
「え、三成くんってそこまで天然?」
「ともあれ、悪い虫が追い払えたようで何よりだ」
すごすごと立ち去った男達の目的を知らずに割り入ったらしいと察し、彼方の突っ込みが止まらない。敢えて訂正も否定もせず、光秀が瞼を伏せたままで吐息混じりに笑いを零した。
「悪い虫が居たのですか?それは危ないところでしたね。お二人共、お迎えが遅くなってしまい、申し訳ありません」
「ううん!光秀さんも三成くんも来てくれてありがとう」
悪い虫を本気の方向で捉えた三成が、安堵を滲ませて天使の笑みを浮かべる。実に丁重な所作で頭を下げた彼へ、凪が慌てて首を振った。
「私からもありがと、しつこかったから助かった」
「しつこい虫だったのですね。あまりお役には立てませんでしたが、ご無事で何よりです」
「うんうん、三成くんはやっぱり天然かあ」
そんな彼方と三成のやり取りへ可笑しそうに笑っていると、不意に腰へ回されたままであった大きな掌が、凪の腰をするりと撫でる。びくりと身体を震わせた凪が、むっとして咎めるように隣の男を見上げると、光秀は内心の読めない表情で笑みを浮かべる事なく、彼女を見つめていた。
「……光秀さん?」
無言で注がれる眼差しを受け、やはり似合わないだろうかと案じた凪の眉尻が僅かに下がる。心なしか消沈した彼女を前に、光秀がそのまま凪の身体を自らの方へ抱き寄せた。
(わっ!?)
改めて光秀の姿を見ると、彼は薄っすらと模様の入った膝丈までの白の水着に白の半袖パーカーを着ていて、露わになったしなやかな体躯や筋の入った腹筋などが、凪の柔らかな肌と触れ合い、密着している。