❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
家康は周りを囲む女性達の格好へ視線を逸らしつつ、辟易した様子で溜息を漏らし、幸村はうるせー女だな、人の都合お構いなしかよと憤慨していた。兼続に至っては口を開く気すらないらしく、胸下辺りで腕を組んで瞼を伏せ、完全に無視する態勢に入っている。
「妹みたいな奴だ。とにかく、俺達は……っておい光秀、お前も何とか言え」
「こういう手合いの小娘達を相手取るのは、お前の方が得手だろう。せいぜい人たらしの手管をいかんなく発揮するといい」
「お前に言われると無駄に腹立つな」
秀吉に話を振られた光秀が、食えない笑みを浮かべて肩を竦める。長い睫毛を伏せて告げた揶揄しか感じられない言葉へ、眉間をひくりと顰めた秀吉が傍に立つ男を軽く睨み付けた。
「一緒に遊べないなら、せめて連絡先だけでも交換しませんか?」
胸元が大きく開いたビキニ姿の女性が、光秀の元へ軽く身を寄せるようにして見上げる。柔らかな身体を、男のしなやかな体躯へ押し付けようとした瞬間、彼があまりにも自然に身を引いた。
「悪いが」
銀色の長い睫毛に縁取られた眸を巡らせ、群がる水着女子達の壁の向こう、少し離れた位置に佇む凪の姿を捉える。残念そうに眉尻を下げる女性へ一瞥もくれる事なく歩き出した光秀が、形の整った唇へ甘い微笑を乗せた。
「あの娘以外、興味が無いものでな」
一方その頃、水着女子の壁に阻まれて近付くに近付けない女子二人組は、何処となく遠い目をしてその光景を眺めていた。さすがの彼方もあの中へと突っ込むのは勇気が要るらしく、けれどもいつまで経っても収まりそうにない様子へ焦れ始め、気合いを入れて足を踏み出そうとする。
「行くよ凪、せっかく遠出して和歌山まで来たのに、遊ぶ時間が少なくなったら勿体ない…!」
「そっち!?」
「あったりまえでしょ、こっちは男漁りじゃなくて、ガチで遊びに来てるんだっての」
「彼方の遊びに向ける情熱、凄く政宗と気が合いそう」
「光栄だね」