❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
簪はどうにも塩水につけるには抵抗があり、今回は特に髪型をいじっていなかった凪が、渡されたシュシュに笑みを浮かべた。気にした風もなくケタケタと笑った彼方と二人、最低限の荷物とロッカーの鍵だけを持って洗面所の前まで向かう。両サイドの髪を軽く残し、毛先だけを巻いた髪を耳上辺りで結い上げてサイドポニーテールにした凪が、彼方から借りたシュシュを付けた。
「可愛い」
「彼方は美人。髪結わないの?」
「海は濡れてなんぼ」
「相変わらずだねー」
彼方は長いカフェオレ色の髪を毛先に向かって緩く巻いただけで、それを自然に流しているスタイルである。凪が不思議そうに問えば、すぱっと友人がいつもの調子で言い切った。遊ぶ時は常に全力な彼方らしい言い分に凪が笑う。
「じゃ、待ち合わせ場所まで戻ろっか。あんま武将達待たせるのも悪いしね。というか早めに行かないと何となく危険な予感」
「それ、なんか分かる」
最低限の荷持を入れたバッグを二人それぞれで持ち、凪と彼方が更衣室の出入り口に向かって歩き出した。すれ違う女性達は皆割と大胆な水着をまとっていて、それへ色んな意味でハラハラした心地を抱きながら外へ出る。彼方の言う事は凪にも思い当たる節があり、戦国武将カフェ【群雄割拠】へ向かった日の道行きを思い出した彼女が、若干複雑な心地になった。
(どうしよう、光秀さんが色気爆発したセクシーなお姉さんに誘惑とかされてたら……!)
ただその場に立っているだけで、色気を振りまいていると言ってもあながち過言ではない光秀が、海で開放的になった肉食系セクシー女子の標的にならないなど、絶対に有り得ない。それでなくとも武将達は全員イケメン武将なのだ。如何にこのビーチが広いと言えど、あそこまで顔の整っている面々が揃っていて、注目を集めない訳がない。
「凪、あんたなんかよく分からん事考えてるでしょ」
「よく分からんじゃないよ、重要な問題だよ」