❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
「目的は訪れる人によって様々だけど、大体は海に入って泳いだり遊んだりする事を目的としている。この時代では、夏と言えば海水浴と真っ先に挙げられる位にポピュラー…一般的なものだ」
「確かに真夏の暑さを凌ぐ為、海に浸かって涼を得るという意味では、合理的な遊戯とも言えるな」
「浜辺はどの道暑いですけどね……」
佐助の模範的な回答を得て、光秀が片手を己の顎へあてがった。残念ながら安土ではそのような事は出来ないが、時折琵琶湖を泳いで涼もうとする者達が居ない訳ではない。納得した様子の男の隣で、家康が何処かげっそりした風に呟く。海に入っている間は良くとも、暑いものは暑い。
「ではこの海水浴場というのは、避暑地という認識なのでしょうか」
「確かに、それもあながち間違った認識ではないかもしれません。後は家族や友人、恋仲同士で行楽として訪れたり、場所によっては海でしか出来ない遊び、マリンスポーツと呼ばれるものを楽しむ為に訪れる人達も居ます。それから」
三成が興味を覗かせて問いかける様へ佐助が頷いた。元々涼しい土地へ訪れるというより、涼む為に海に浸かるという意味合いではあるが、まったく間違いだとも言えないだろう。海水浴を知らない武将達へ出来るだけ噛み砕いて分かりやすいように説明した彼は、不意に敢えて言葉を切った。更衣室の奥から着替えを終えただろう、大学生と思わしき男性三人組が楽しげに言葉を交わしている。
「お前今日何人目標?」
「せめて三人位はいきてーな」
「つかさっき更衣室前に居た女の子二人、可愛かったぞ」
「ああ、あの二人な!見かけたら声かけろよ」
「お前んな事言ってっけど、彼女いなかったっけ?」
「バーカ、海に来て彼女の事なんか気にしてられっかよ」
武将達とのすれ違い様、男達がそんな会話を繰り広げながら出入り口へと向かっていく。その明らかにチャラそうな雰囲気を醸し出していた彼らを一瞥し、佐助が中指で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「…それから、男女の出会いを求めて海へ足を運ぶ人達も、決して少なくありません」
「ほう……?それはまた随分とあからさまなものだな」