❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
男性更衣室と女性更衣室は少し距離があり、女性用の方が少々奥まった場所にある。女二人だけで離れるという発言を耳にし、光秀の柳眉が僅かに顰められた。
「お前達二人だけで行くのか」
「大丈夫だって明智さん、いざとなったら大声上げるから」
「それ程までに危険な場所なのですか?宜しければ私がお二人のお供をさせていただきますが…」
光秀の何処と無く案じているような声色を耳にし、凪の心がきゅんと疼く。けれども凪からしたら、光秀達武将の方が余程色んな意味で心配である。彼方が軽い調子で光秀へ断りを入れると、三成が心底心配そうに眉尻を下げて片手を己の胸へあてがった。
「いや、どっちかって言うと三成くんを一人で女子更衣室前に残しとく方が心配だし」
「確かに……海は割と肉食系多いもんね……」
「にくしょく……?」
女性二人を案じてくれる紳士な男達を見比べ、実に神妙な顔で彼方が告げる。三成のようなキラキラ天使系の男が一人で居るなど、格好の餌食というものではなかろうか。うんうんと凪が何度も頷く傍ら、三成が不思議そうに首を傾げた。
「まあともかく、そんな心配しないで。じゃ、行ってきまーす」
「行ってきます」
軽い調子でひらひら片手を振り、彼方が凪の手を引いて歩き出す。凪も軽く背後を振り返って手を振ると、佐助が応えるようにそれを振り返してくれた。
「行ってっしゃい。さて、俺達も行きましょう」
「つーかここ、一体何が目的の場所なんだ?」
「……そうだね、海が珍しいって訳でもないだろうし」
女性二人の背が見えなくなった頃、佐助が腕をおもむろに下げて声をかける。荷物を手にしたまま、更衣室の方面へ連れ立って歩きながら、幸村が極力ビーチに居る露出高めな女性達を視界に入れないよう努めつつ、友人へ本質的な事を問いかけた。同じく女性から顔ごと目を背けていた家康も賛同し、理解出来ないとばかりに眉間を顰める。如何せん、武将達の時代に海水浴などという習慣はない。川での水浴びなども、ある種身を清める行為として認識されている為、遊びという感覚は全員皆無だ。