❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第2章 武将と五百年後ノープランツアー 後
朝から目映い陽射しが照り付けるビーチには、前述の通り多くの若者達が遊びに来ていたのだが、その誰も彼もが当然の如く水着である。男性は自分自身で見慣れている他、戦中、野営中に川で水浴びする事も珍しくないので、別に何とも思わないが問題は女性陣の方であった。
「あんなの、ほとんど裸じゃねーか」
「この場へ訪れている者達は皆、頭がおかしいのか…?」
幸村が心なしか顔をほんのりと赤らめながら呟く。隣に並び立っていた兼続もまた、心底理解に苦しむといった様子で柳眉を顰め、この国の行く末を本気で案じていた。足を出しても破廉恥、肩や項(うなじ)が見え過ぎていても破廉恥。そんな常識が当たり前の武将達に、五百年後の水着姿の女性達は衝撃的過ぎる。案の定、懸念していた通りになった凪は、隣で忍び笑いを零している彼方へこそりと耳打ちした。
「ねえ、皆滅茶苦茶抵抗示してるんだけど…!?」
「だから面白いんじゃん…!カルチャーショックに固まる武将とか、そんなん見れるの今だけでしょ」
「でも他の人でこの反応だし、私達も怒られるんじゃ……」
「何言ってんの。海に来て露出無しとか、焼肉屋行って肉食べないのと一緒だから」
ある程度予想出来てはいたが、想像以上の反応を前に凪が怖気づく。久々の海だからと先日の買い物で彼方と二人、思い切りはしゃぎながら水着選びをしたものの、この空気感の中で自分達も水着になるには相当勇気が必要である。けれども彼方はまったく動じていなかった。最もらしい持論を展開し、がしりと凪の片手首を掴んだ。
「という訳で、私達着替えて来まーす!男性陣の方は佐助くん、宜しくね」
「ああ、こっちの事は任せて。二人も気を付けて」
「じゃあ着替え終わったら、この男性更衣室前で待ち合わせね」
凪と手を繋ぎ、未だ戸惑いにどよめく武将達へ、片手を上げて声をかけた彼方が佐助へ後を託す。佐助がしっかり頷いてくれたのを確認して若干安堵すると、凪が待ち合わせ場所として今現在居る場所を指定した。