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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



「私の友達に連絡を取ったら、何とか納得してくれたみたいで迎えに来てくれるみたいです。ただ、当然ちゃんとした事情も説明出来てないので、ちょっと色々大変かもしれないんですけど…」
「普通に受け入れられる事でもないし、その辺りは俺も事情説明に協力する」
「ありがとう佐助くん」

電話先で説明をするにはあまりにも事情が壮大過ぎた。ひとまず全員が移動出来る環境と、潜伏場所────もとい、宿泊場所などを提供してくれるよう頼み込んだ末、友人が了承してくれた事を伝えると、武将達や佐助も安堵したようだった。

「という訳で、その子が来るまでもう少し待っててくださいね」
「ええ、勿論です。突然お邪魔させていただくにも関わらず、何の手土産もなくお伺いするのは申し訳ないですね…」
「確かにそうだな…手ぶらで夜半に大勢で押しかけるのは礼儀に反する」
「五百年後の人間に五百年前のもの渡して喜ばれるんですかね」

三成が実に申し訳無さそうな雰囲気で面持ちを不意に曇らせる。礼儀正しい三成らしい物言いに、その主君たる秀吉も頷いて賛同した。家康の的確とも言える突っ込みへ苦笑した凪を、ふと隣に居る光秀が呼ぶ。

「凪」
「はい?」

しっとりとした耳に馴染む低音で名を呼ばれ、凪が光秀を見上げた。その刹那、袂(たもと)から取り出したらしい手拭いを片手に持った光秀が、前髪を軽くかき上げてやりながら薄っすらと滲んでいた汗をとんとん、と拭ってくれる。あまりにも自然な所作で行われた行動に耳朶がほんのり紅くなり、気恥ずかしそうに礼を紡いだ。

「あ、ありがとうございます…光秀さん」
「こちらの世もなかなか暑いな」

凪の表情を目にし、吐息に笑いを滲ませた光秀が手拭いを袂へしまう。指先で前髪を直してやりながら、まったく暑さなど感じてなさそうな素振りで光秀が告げた。

「光秀さん、全然暑そうに見えないですよ?」
「そうでもない。お前が汗を拭ってくれるなら、多少は涼しくなるんだが」
「汗かいてないです」
「おやおや、それは残念」

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