❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「ですが本当にそんな事が可能ならば、斥候からの伝令も受け取りやすくなりますね」
「早馬の伝令よりも確実に届くなら、確かに言う事はない」
「些細な連絡も使いを出さないで直接伝えられますしね」
「ほう……?一体誰にその些細な連絡とやらをするつもりだ、家康」
「……別に誰かを想定してるわけじゃないですよ」
「そうだな、凪と顔をなかなか合わせられない時でも、気軽に声がかけられそうだ」
「秀吉からの連絡は受け取るなとあの娘に伝えておくとしよう」
「何でお前にそんな事決められなきゃならねえんだよ」
(……武将達がスマホについて語ってる。とてつもなくレアな光景だ。よく心に刻んでおこう)
もしもスマホが使えたら話をする武将達を、心のアルバムにしっかりと佐助がしまい込んだ頃、話を終えたらしい凪が通話を切って輪の中へ戻って来る。
「お待たせしました!何とかなると思う………多分」
「何、その取って付けたような言い方」
「友人に無事は伝えられたか、凪」
意気揚々と戻って来た割に、最後の言葉は若干不安げな色を滲ませていた。苦笑する凪へ家康がそっと突っ込む傍ら、光秀が凪の隣へ近付き、彼女の顔を視界に映す。端末の電源を入れた後、友人からの通知を見て落ち込んだ様子を見せていた凪を気遣ったのだろう、光秀の言葉に彼女はふと顔を上げた。そっと穏やかな、しかし気遣わしげな色を覗かせて来る光秀の眼差しを受けた凪は、相手を安堵させるよう笑って見せる。
「はい、取り敢えず無事だって事は伝えられました。ただまあ…直接会ったら色々訊くとは言われたんですけど」
「そうか」
凪の笑顔を視界に入れ、光秀が安堵を滲ませて口元に微笑を刻んだ。それだけ案じていたのならば、色々と事情を訊かれたとしても仕方ないだろう。片手を持ち上げてそっと頭を撫でてやると、凪が嬉しそうにはにかんだ。そして先程した電話の成果を全員へ伝えるべく、おもむろに向き直る。