❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
基本的に武士たるもの、女に苦労をさせてはならぬという常識が染み付いている武将達にとって、それは至極当然な事であるが、現代においてはその限りではない。真顔のままで言い切る友人に、凪もこっそりと心の中で同意を示した。
(だって光秀さん、基本的に私にお勘定させてくれないもんね。新しい小袖も、気付いたらいつの間にか箪笥の中にしまわれてたりするし……)
何度乱世でどちらが勘定を払うかというやり取りをした事か、と凪が思い返している中、佐助が電卓を持った片手で軽く眼鏡を押し上げる。
「そんな訳で、経費を引いた合計は三十三万二千七百五十八円、それを皆さん六人で割り当てると五万五千四百五十九円となります」
「さすがに人数で割るとあれだけど、むしろ路上パフォーマンスでそこまで稼げたんだから充分なんじゃない?」
「うん、お小遣いとして考えれば全然いいと思う。滞在期間もどの道限られてるしね」
あと数日現代で暮らす分には、まずまずの金額だろう。凪と彼方が言葉を交わしている様を耳にし、それまで静観していた兼続が佐助へ視線を向け、もっとも武将達が気にかかっているだろう件を問いかけた。
「佐助、こちらの世の貨幣価値の基準は何だ。一人五万五千四百五十九円と言っていたが、それは石高(こくだか)での計算か?」
「石高としてみるならば中々の価値だと思うが、凪達の様子を見ると、そう高値という訳でもなさそうだな」
「確かにただ数字並べられただけじゃ、実際どんなもんか分からねー。佐助、そこんとこどうなんだよ」
兼続に続く光秀の発言により、武将達が再び神妙な顔つきになった。数字としてはそこそこ大きなものだが、果たしてその価値とは如何に。ちらりと凪、彼方の二人を視界に捉えて推論を立てる光秀が佐助を見る。幸村もそれらに同調し、友人を振り仰ぐと、佐助は実に真面目な面持ちのまま、きっぱりと言い切った。
「石高換算だと、大体一石弱位だと思います」
「……ほう?五百年後の世の民達は、余程食うに困る日々を送っていると見える」