❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「ここから経費、つまり公演に使用した模造刀代を差し引きます。ちなみに模造刀は一振り辺り一万五千九百八十円で五振り分、合わせて七万九千九百円で、幸村の十文字槍だけ一万八千円だから、計九万七千九百円が引かれる事になる」
「なんであんな軽い槍のくせに一番高いんだよ」
「それは俺にも分からないけど、まあ尺の分だと考えておいた方が妥当だ」
つらつらと数字を並べ立てる佐助が口にした、十文字槍(模造槍)の金額に触れれば、幸村が心底不満げに眉根を寄せる。本物を知っている身としては、あの完成度ではご不満という事らしい。ともあれ、元の稼ぎが大きい分、経費を差し引いても何ら問題はなさそうだ。
「経費で十万近く差し引いても金額的には全然だね」
「私は別にいいもの見せてくれた御礼として模造刀代とかは要らないって言ったんだけど、どうしてもって言うからさ。特に秀吉さんが」
凪の発言に彼方が苦笑して肩を竦める。公演で使用した模造刀の類いは、凪が光秀に渡した狐面を除いて彼方が立替という形で支払いをしてくれた。有名グループ令嬢にとってその位の金額は、趣味の聖地巡礼でスパーンと消える程の額である為、あまり気にかからない。相変わらずの金銭感覚に凪が眉尻を下げて笑った。女性陣二人の話を耳にし、秀吉が譲らないと言わんばかりに頷く。
「当然だ。今回の催しはお前にこれ以上余計な負担をかけない為のものでもある。使った道具の金を彼方に払わせたんじゃ、それこそ本末転倒だろ」
「ええ、私達なりの誠意を彼方様に是非お受け取り頂きたいのです」
「刃の潰れた偽物とは言え、刀を女に工面して貰うなんて、男としてどうかと思うしね」
「世の中の男に見習わせたいくらい、武将が男前なんだけど」
秀吉の後に続くよう、三成が天使の如き笑顔で言い切った。きらきらと周りに光の粒子でも舞っているかのようなそれを前にして、彼方がうっと小さく呻く。家康もまた、三成の隣に座しながら瞼を伏せつつ、淡々とした声色で肯定を示した。