❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
脱、甲斐性なしの為の試みという事もあり、武将達の顔がふと引き締まった。
「皆さん、お待たせしました。お楽しみの集計結果を発表します」
「待ってましたー!普通に働いて稼ぐより、よっぽど遊び心あるよね」
「むしろ普通の職に就いてる皆が想像出来ないというか……」
片手に電卓、片手に彼方から貰った現金支給用の給与袋を人数分持った佐助が、神妙な面持ちで面々の前に立つ。彼方が盛り上げるように声を上げる中、凪が一般職に就いている武将達の姿を想像して、そっと苦笑した。
「ああ、佐助殿があの催しを思い付かなければ、皆(みな)でてぃっしゅ配りとやらをやる羽目になるところだったな」
(光秀さんがティッシュ配り………どう考えても変な意味で目立っちゃうな……)
ストローに口を付け、ミルクティーを飲む凪へ光秀が小さく肩を竦めて冗談めかした調子で告げる。途中まで第一候補がティッシュ配りであった事実を知り、絵面を想像して彼女がますます苦みを深めた。
「しかしこの時代の金ってのは妙だよな。あんなのただの紙じゃねえか」
「確かにそうですね……紙に銅銭や銀銭と同じ価値があるというのは、些か妙な感じがします」
「だが持ち歩きの点においては悪くない。……越後の貨幣に紙を導入すべきか、謙信様にご相談差し上げるべきかもしれないな」
武将達の常識では、銀銭銅銭、あるいは金子が貨幣として当たり前の認識である。投げ銭用の籠を覗き見た際、紙幣を見て妙な顔をしていた幸村が思い出したように告げた。三成もそれについては同意らしく、片手を顎にあてがって神妙な表情を浮かべる。同じく軍師且つ越後の執政官を担う兼続が、淡々とした声色ながらも深い思案を覗かせて呟いた。
「兼続さん、紙幣の本格的な登場は後二十年程先の話なので、せめてそれまで待って貰えると史実的に助かります」
(二十年でもう紙のお金って登場するんだ……)