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❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国

第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前



彼方が小さく呟くと凪が疑問を覚えて首を傾げた。佐助が気遣いながら大まかな内容を説明すると、些か複雑な心地ながら、何故光秀が敢えてそんな設定にしたのか分からず、ぎょっとして正面へ向き直る。周囲ではざわざわと歴女達がざわめき始めた。宿命の対決ね、などという悟りの境地に至ったような呟きがあちこちから聞こえ、意識を正面へ集中させると、端に控えていた三成が秀吉の元へ駆け寄り、優雅に膝をついた。

「秀吉様、信長様の生死は未だ不明。ここは一度光秀様を捕縛し、事の真偽を確かめる必要性があるかと」
「三成!?信長様の生死が不明だなんて何と恐れ多い事を……とにかく、お前の言う通りだ。光秀を捕らえない事には話は始まらねえ」
「だったらさっさとやりましょう、秀吉さん」

三成が突然入れて来た信長の生死不明の報へ目を見開き、秀吉が動揺を露わにする。しかしながらすぐに切り替えると、腰に佩(は)いた刀をすらりと抜き放ち、構えの姿勢を取った。端で半眼のままやり取りを見ていた家康も、この一連の茶番を早々に終わらせるべく、距離を詰めて帯刀した短刀を抜き去る。安土の面々が出揃った様を目にすると、光秀は口角を上げて微かに笑み、そのまま視線を軽く背後へ流した。

「お前達には悪いが、むざむざ捕まってやる訳にはいかない。こちらも増援を呼ばせてもらった。かの武田の猛将、真田幸村殿と越後の執政官、直江兼続殿だ」
「なんであんたがしれっと甲斐や越後と手組んでるんですか」
「先日、俺が本能寺へ攻め入る前に調略した」
「化け狐に調略されるなんざ冗談じゃねえぞ」
「落ち着け幸村、それが芝居上の事なら仕方ない」

後方に居る幸村と兼続を見て不敵に笑った光秀へ、家康が呆れを滲ませながらつい突っ込む。さらりと言ってのけた光秀に対し、始めから同じ組みで組む事を嫌がっていた幸村が顔を顰めた。あまり周りへ聞こえぬよう配慮しているのか、一応控えた声である事だけが救いである。幸村に対し、兼続が腕を緩く組んだ体勢のままで微かな溜息を漏らした。行くぞ、と短く声をかけ、調略された設定らしい二人が前へ進み出る。

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