❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
そんな中、暫し三成が貰ったというポケットティッシュの広告を見て、佐助が眼鏡のブリッジを軽く押し上げた。
「確かにティッシュ配りは場合によっては歩合による即日支給が可能だったりもしますが…皆さんが全員でティッシュ配りをしている姿を見るのは、いち歴史ファンとしては正直かなり抵抗があります」
ティッシュ配りを侮っているという意味ではなく、武将がそれをやる事で色々とシュール過ぎて困るという意味である。ティッシュ配りとて立派な仕事のひとつだ。佐助の発言を別の意味で捉えたらしい兼続が、微かに眉根を寄せる。
「そのてぃっしゅ配りとやらは、そこまで高難度の仕事なのか」
「配り、とついているからにはそのてぃっしゅとやらを配るんだろう。通りを歩く小娘達にでも配り歩けばいいという事か」
「まあ皆さんであればすぐにノルマも達成出来そうですが………あ、」
光秀が佐助の前に置かれたティッシュへ視線を流し、首を軽く傾げる。各々が真摯に思考を巡らせる中、不意に佐助が小さな声を漏らした。一斉に武将達から注目を向けられ、彼は再び眼鏡のブリッジをくいっと押し上げた後、名案とばかりにレンズの奥にある三白眼を若干煌めかせる。
「どこまでの稼ぎになるかは分かりませんが、俺に考えがあります」
「ほう…?聞かせていただこう」
「ああ、頼むぞ佐助」
「佐助殿、頼もしいです!」
「武将達の期待が俺に集まっている……感激だ」
「で、その考えってなんだよ」
光秀、秀吉、三成の言葉を受けて佐助が密やかに感動を噛み締めると、幸村がコーラを飲みながら先を促した。最初こそ炭酸のしゅわしゅわ具合に驚いていた幸村だが、すっかり慣れたらしく、今では普通にその炭酸の弾け具合を楽しめる程の余裕っぷりだ。意外と適応能力は高いらしい。
「今説明をさせてもらいます。少し準備するので待っていてください」
そう言うや否や、佐助は割り箸を三膳取り出し、綺麗に割ると先端部分に赤と青の色をつけ始める。各々が見守る中、赤青各三本ずつとなった箸の先端を握り、色が見えないようにしてよく混ぜた。