❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「確かに、今の俺達は図らずしも甲斐性無しという事になるだろうな」
「武将として有り得ない事ですね。普通に考えて」
「女に面倒見られるのは情けねーけど、ここじゃ俺達が持ってる禄(ろく)なんか使えねえだろ。こっちで士官先でも探すのか?」
「まずこの争いがないらしい世で、士官先があるかすら謎だ」
すっぱりと言い切った光秀の言葉に、家康が如何にも嫌そうな顔をした。幸村も同意を示すが、彼の言う通り武将達が持っている銅銭銀銭、はたまた金子はこの時代において価値がない……訳でもないが、色々と手続きを踏んで換金する必要がある。となれば働く、という思考に切り替わるのは当然だが、生憎とこの現代に彼らの武勇を活かす職は限られてしまっている。兼続のもっともな指摘に、光秀が視線をふと佐助へ投げた。
「佐助殿、五百年後の世で生まれ育った貴殿であれば、何か良策があるのではないか」
「そうですね……皆さんで出来そうなお金を稼ぐ方法、ですか」
視線を下へ投げ、佐助が思考を巡らせる。当然通常の給与支払い方法は使えないし、そもそも末〆翌月払いなどという悠長な話ではない。現金日払い、且つ身分証明が不要な形での収入となると、限りなく狭まって来る。
「そういえば先程、てぃっしゅ配りのばいとをやらないかと男性の方からお声掛けを頂いたのですが、てぃっしゅ配りのばいと…とは一体どういったものなのでしょうか」
「石田三成、お前何普通に五百年後の世の人間に話しかけられてんだよ」
「三成は元々人当たりが良さそうに見えるから、例え時を越えていようと、その人柄が滲み出てるんだろうな」
「ただぼーっとしてるように見えてただけじゃないですか」
ふと三成が思い出した様子で袂からポケットティッシュを取り出し、それをテーブルの上へ見えるように置いた。裏面には広告が挟まれており、大きな毛筆文字で【お金に困った時はバイトするで候(そうろう)】と書かれている。光秀が三成からそれを受け取り、佐助へ渡している間、幸村が真顔で突っ込んだ。秀吉が素直にフォローを入れると、家康が何処となく投げやりに告げる。