❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
以前、御殿で光秀と共に食べた白桃のやり取りを思い出してしまい、更にどちらかと言うと、当時の自分の発言を思い出して羞恥で転げ回りたくなる衝動に駆られるのだ。とん、と冷たい白桃が凪の唇にあてられた。早く口を開けろと暗に言われている事へ、きゅっとそれを引き結ぶと、凪が観念した様子でそっと白桃を食べる。
「美味いか」
「甘くて美味しい…です」
「それは何より」
凪の気恥ずかしそうな顔を見て、光秀がフォークを手にした片手を引き戻しながら、首を軽く傾げて問いかけた。金色の眸をそっと眇め、何処となく愉しげな様子で口角を持ち上げる男の姿に、物言いたげな眼差しを送るも、彼が意に介する様子はない。そんなバカップルを半眼で見ていた彼方は、微かな吐息を零してフォークに刺したガトーショコラを頬張り、頬杖をつく。
「明智さんって、意外と独占欲強いよね。放任主義っぽそうな感じなのに」
「光秀様は凪様の事を、とても大切にしていらっしゃいますから」
隣で三成が邪気の無い天使の笑顔で言い切った。そんな友人と三成の会話を耳にしつつ、凪は口内に広がる、チョコよりも甘い味に眉尻をそっと下げたのだった。
──────────────…
戦国武将パフェを堪能したその後、凪と彼方の女性二人はお手洗いで化粧直しをして来ると席を立った。そんな訳で現在席には男性陣のみが居る状態となり、冷たい緑茶で喉を潤した後、何とも言い難い顔で秀吉がおもむろに切り出した一言が、そもそもの発端となる。
「このまま彼方の世話になりっぱなしっていうのはどうなんだ」
「確かに……ほてるの一室を私達に提供して下さっただけでなく、着物や甘味代まで彼方様がお勘定をされるとの事ですが、それでは申し訳が立ちませんね」
豊臣主従が深刻な顔をして口にした事を皮切りに、武将達は密かに抱いていた感情を露わにした。神妙な顔で頷いたのは佐助であり、光秀もまた胸前で軽く腕を組みながら片手を顎へあてがい、視線をテーブルの上に投げる。