第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前

「ほう…？では溶ける前に食べてしまわなければならないという事か」
「はい。あ、この種子島もチョコですよ」

光秀にしてはまだまともな部類である感想に、凪が嬉しそうにはにかんだ。すくわれていた片手がそっと離され、一度自らの方へスプーンを引き戻した凪が説明をすれば、光秀は珍しそうに双眸を瞬かせた。冷凍庫など無論存在しない乱世では、氷はとんでもない高級品である。それをこうしてふんだんに使い、食べる事が出来るのはこの上ない贅沢なのだろう。関心した様子の相手へ微笑み、ふとパフェへ視線を向けると、凪が楽しそうに告げた。さすがにスプーンで細長い種子島チョコをすくうのもどうかと思い、指先でそれをひょいと掴めば、光秀へ差し出す。

「どうぞ、光秀さんの銃です」
「おやおや、先程まで茹で蛸のようになっていたかと思えば、今度は随分と積極的な事だ」

種子島チョコを細い指先で持った彼女が楽しそうに笑った。先程とは態度が異なる様子に双眼を軽く瞬かせ、光秀が肩を緩く竦める。凪が積極的にしてくれる事は嬉しいが、自分の言動で顔を愛らしく染める凪の姿を見たいが為、意地悪をしている身としては、刺激を加えたいところだ。

「あーんするのはちょっと慣れました」
「それは困りものだな」

されるよりする方が幾分羞恥心がましだという凪の発言に口角を持ち上げ、光秀がさして困ってなさそうな調子で告げる。きょとんとした面持ちを浮かべた彼女を前に、光秀はそっと頬杖を解いて腕をテーブルの天板へ置いた。ほんの少しだけ身を乗り出し瞼を伏せると、銃口がこちらに向けられている種子島の形をしたチョコをぱき、と微かな音を立ててかじり折る。銃身部分が半分程失われたそれを前に、光秀が片手でそれをするりと奪った。口内に甘さが広がり、銃が溶けて行く。引き金部分を今度は彼女の方へ差し出し、首を緩く傾けて告げた。

「ほら、お前の番だ」
「えっ」
「慣れたと言うならば、新たな刺激が必要だとは思わないか」