❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
凪が友人に手酷い扱いをされないか、その点を案じた家康が眉根を僅かに寄せる。苦笑した凪が幾分不安げな色を見せていると、光秀が傍でいつもと変わらぬ穏やかな声を発した。それへ背を押されるかのように、凪は小さく頷くと武将達や佐助が見守る中、スマホを慣れた手付きで操作して友人へ連絡を取る。
凪がスマホを片手に持ち、それを耳へ押し当てている姿を目にして、武将達は不思議そうに彼女を見た。光秀も電話の用途で凪がそれを使用している姿を目にした事がない為、些か不思議そうな面持ちで金色の双眼を微かに瞬かせている。
(深夜の二時過ぎだからなー…アニメ鑑賞とかしてたら起きてるかもしれないけど…)
何度目かの懐かしい電子コール音が鼓膜を揺らす中、既に寝入っているかもしれない友人へ祈りを込めつつ端末を握った。やがて八コール目が終わろうとしていた頃、端末からぷつりと微かな音が響く。
『はいはい、もしもーし。どなたー』
「繋がった…!!」
機械越しにとても懐かしい友人の、酷く眠気に満ちた声を耳にして凪が思わず嬉しそうに声を上げた。その様子に気付いた武将達が驚いた様子で双眼を見開き、佐助も凪を見守る。
『え、嘘、その声凪!?』
「うん、あのね、ひさしぶ…──────」
『ちょっとあんた今まで一体何処の山こもってたわけ!!?滅茶苦茶心配したんだけど!職場にも来てないって言うし、おばさんとこ連絡しても知らないって言うし、自由奔放過ぎじゃない!?せめて山行くなら私には一言言いなさいよ一緒に行くから!』
(山ごもりしてたんだと思ってる…!!)
キーン…と鼓膜がやられんばかりの怒声が端末から響き、凪が思わずスマホを耳から離した。恐恐と再度端末を片耳へ押し当て、凪が苦笑と焦燥を滲ませつつ電話先の相手へ必死に訴えかける。
「あのー彼方(かなた)、色々と積もる話もあるし、色々説明したいのは山々なんだけど、今ちょっと緊急事態でね。彼方に助けて貰いたいというか…」