❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
爽やかでいながら少し冷たい印象を思わせる、綺麗なそのパフェは光秀のイメージによく合っていた。
織田信長さんを明智光秀さんの横に並べ、彼方がスマホを構えた。凪もまた、光秀へ撮ってもいいかと窺いを立てると、光秀が頷く。同じくスマホを構え、二つのパフェを前にしつつ頬杖をついている光秀もフレームインさせた。
「光秀さん」
「……ん?」
スマホを構えながら光秀を呼ぶ。凪の方へ視線を向け、短い相槌を打った光秀が金色の双眼を微かに眇める。何処か柔らかく口元へ微笑を乗せたその様をしっかりと激写した。目線もばっちりともらい、パフェと光秀がしっかり映った写真を保存し、凪は満足げな様子で後で加工しようとスマホをしまい込む。
(光秀さん自身に加工は一切要らないけど、綺麗に背景とか加工して、後でホーム画面に設定しよっ)
店内が和の装いである事も相俟って、まるで乱世で逢瀬している時の一枚のようだ。並んだ二つのパフェはとても対称的だが、光秀のそれは信長のものより前へ出過ぎない、あくまでも傍で支えているかのような印象を与える。充電が続く限りとはなってしまうが、思い出を切り取っておけるそれに笑みを浮かべ、乱世へ帰る折にはモバイルバッテリーを多めに買って帰ろうなどと考えていた凪を見て、光秀が吐息を零すように笑う。
「ご満悦だな、凪」
「はい、いい思い出が出来たなーと思って」
「そうか」
彼方の織田信長さんは回収され、食べるのが勿体ないと言いながら、早速彼女は敦盛チョコを食べていた。そんな周囲を尻目に、光秀は正面に居る凪を映し、双眼を柔らかく眇める。笑顔を浮かべつつ頷いた彼女は実に楽しそうであり、声は軽快に弾んでいた。短い相槌を打った男は、瞼をゆるりと一度伏せた後、それをそっと持ち上げる。金色の双眼に恋仲の姿を映し、唇を開いた。
「ならば、お前の記憶によりよく刻まれるよう、その思い出を作るとしよう」
「はい!………え?」