❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
【直江兼続さんぱふぇ】はベリー系のパフェである。ブルベリーとほんのりラズベリーが混ざり合ったソースが、細やかに砕かれた透明な氷へほんのりと彩りを添えていた。一番上の層は生クリームで、トップにはベリー系のシャーベットが乗っている。周囲を飾るベリーの傍に、文を象ったホワイトチョコが刺さっており、反対側には兼続の家紋である三つ盛亀甲花菱紋(みつもりきっこうはなびしもん)を簡易的に象ったチョコが添えられている。そしてもっとも印象的であったのが、シャーベットの後ろにどん、ととてつもないインパクトを添える【愛】一文字のチョコだった。
「なるほど…その文はかの有名な直江状、愛は兜の装飾か。皆さんのパフェを見る限り、ここのカフェのオーナーはかなりコアな歴史オタクと見た」
「おたくってのが何なのか知らねーけど、この一文字はだいぶ印象とかけ離れてるぞ」
佐助が直江兼続さんぱふぇを見て感心しきりに呟く。菊チョコをすべて食べ終え、三つ葉葵紋のチョコを食べつつ考察を述べた。いまいち佐助が何に感心を抱いているのか分からない幸村だったが、愛の一文字が兼続に似合うかと言われれば幸村的には否である。そんな中、頬杖をついて周囲の様子を観察していた光秀が、瞼をゆるりと伏せて笑みを浮かべた。
「なるほど、兼続殿がそこまで愛に厚い御仁だったとはな。今後は凪との接触を更に控えてもらうとしよう」
「勝手に決めるな。そもそも俺は兜にこんな文字など掲げた事はない」
さらりと牽制の言葉を放つと、兼続が双眸を眇める。光秀の物言いに苦笑した凪が、隣の隣に居る幸村のパフェを見た。そうしてぱちぱちと双眸を瞬かせ、首を傾げる。
「……真田幸村さんぱふぇに乗ってるのは…五円チョコ?」
「なんか意味はよく知らねーけど、明らか馬鹿にされてる気がすんだけど」
「凪さん、これは五円チョコじゃなくて、幸村の家紋として有名な六文銭だ。見た目はまあ、似てないわけでもないけど」
「え」
話題を変える一環として告げた事だが、とんだ爆弾だったようだ。隣のテーブルで彼方が可笑しそうに笑い、佐助が冷静にフォローを入れつつ突っ込む。