❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
「つーか食い物をこんな風に飾って出すなんて、五百年後の連中ってのは変わってんだな。信玄様なら喜んで食いそうだけど」
幸村の感覚からすれば、現代のものはどれも理解が及ばない範疇らしい。確かに限られた食材などで過ごさなければならない中、料理を飾るという習慣は余程の富豪か権力者くらいなものだろう。そこを行くと安土城の宴で出される料理は、政宗が趣向を凝らしてくれている為、見た目も味も文句なしである。幸村のぼやきを耳にし、家康がとてつもなく嫌そうな顔で告げた。
「あの甲斐の虎が意気揚々と、こんなやかましい色の食べ物を食べてるなんて、想像するのも嫌だけどね」
信玄とはまだ本能寺の夜に一度だけしか顔を合わせた事しかないが、甘味好きというのはとても共感出来る。そんな事を考えていた凪は、ふと視線を何気なく向けた先で、徳川家康さんの愛らしい柑橘系の色合いが、まるで鮮血を散らしたような赤に染まっている事に気付き、黒々した眸を瞬かせる。
「い、家康…!せっかくの黄色い菊のお花が真っ赤に……」
「味がはっきりするようになった」
綺麗な淡黄色の菊が、真っ赤に染まっている。そもそもチョコレートに唐辛子は合うのか、という突っ込みを抱いた凪を余所に、家康がいつもの調子で淡々と告げた。
「さながら、惨劇の花畑だな」
「戦国武将らしいですね」
光秀が口角を上げつつ愉しげに告げると、佐助も綺麗な方の菊チョコを食べながら頷く。
「お待たせ致しましたー!【真田幸村さん】と【直江兼続さん】です」
次いでやって来たのは幸村と兼続のものであった。そして一同、兼続の元へ置かれたパフェを前に秀吉の時とは異なる意味で固まる。各々の視線が兼続のそれへ注がれる中、もっとも疑念を抱いたらしい兼続が柳眉をひくりと動かした。
「……何故【愛】という文字が甘味の上に乗っているんだ?」
「兼続さんの象徴…なのかな?」
「だいぶ程遠いものだと思うがな。長い刻をかけた伝聞というものは、おおよそ当てにならないものだと再認識出来た事は幸いだ」