❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
バニラソフトクリームを覆わんとする金箔が見事に光り輝いていた。その後ろには馬蘭(ばれん)と呼ばれる菖蒲の葉に似た形の後ろ立て(兜の後方につける装飾具)を再現しているのか、それの形のホワイトチョコがまるで後光が射しているかの如く飾られていた。グラスの縁には半円にカットされたシャインマスカットがぐるりと並べられ、実に高級感溢れる仕上がりである。むしろ、輝かんばかりの金箔が目に眩しく、とにかく派手だ。
「こちらの世では、お前も慶次に勝るとも劣らない程の傾奇者だと捉えられているのかもしれないな、秀吉」
「人の格好をとやかく言う趣味はないが、まさか後世ではこんな贅沢者だと思われれてるのか…」
「黄金の茶室のイメージが全面に出る感じね。あと兜」
まだ現在の秀吉は天下を取った訳でもなく、千利休に黄金の茶室も作らせていない。歴史オタク達はつい顔のにやつきが止まらない構成要素だが、本人からしたらさっぱりといったところだろう。光秀が可笑しそうに笑って告げる傍ら、若干苦笑しながら秀吉が呟きを零した。彼方も苦笑しつつ、ふと隣の三成へ視線を向ける。
「三成くんのはピオーネで九曜紋が表現されてるね」
「私の家紋がこのような形で……とても光栄に思います」
「何か色合いも三成くんっぽくて可愛い!」
【石田三成さんパフェ】は、三成の柔らかな印象を思わせるグレープ系である。何処となくシャインマスカットメインの秀吉のものと対になっている雰囲気がまた、主従を思わせて歴史オタク達の心を躍らせる。秀吉のものと同じく、フレークとグレープソース、生クリームのムースが鮮やかな層を作り、その上にはグレープ味のシャーベットが乗っている。そのシャーベットを囲むようにして八つのピオーネが並べられており、真上から見ると三成の九曜紋を表しているようであった。横には大一大万大吉(だいいちだいまんだいきち)の有名な文字を象ったチョコが飾られ、反対側には軍配の形をしたチョコが添えられている。薄っすらグレープの紫色をメインにしたそれに、女性二人のテンションが上がった。