第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前

細かいナッツが散りばめられ、たぬきの尻尾の反対側には、勝利を運ぶ脇差(現代では短刀とされている)、物吉貞宗を象ったチョコが刺さっている。

女性二人が楽しそうに声を上げる中、家康が完全に解せないと言わんばかりの面持ちを浮かべた。さすがに本人を前にして、実は現代では家康がたぬきっぽいと伝わっているなど、口に出来る筈もない。そんな中、三成が家康のパフェを見て、何処か感動した様子で眸を純粋に輝かせている。

「さすがは家康様。ご立派な立ち姿です。たぬきの尻尾は私にも理由を推し量る事は出来ませんが、きっと家康様の勤勉なお姿を象徴したものなのでしょう」
「たぬきが勤勉って聞いた事ないけど」

あくまでも純粋な賛辞を送っている三成に対し、家康が淡々と突っ込んだ。ソフトクリームが溶けてしまうから、という理由で先に食べているよう促すと、再び店員がやって来る。

「お待たせ致しましたー！【豊臣秀吉さん】と【石田三成さん】です」

店員が秀吉と三成の前にパフェを置いて立ち去って行く。まず最初に、豊臣秀吉さんぱふぇを目にした全員が息を呑んだ。本人もぎょっとした様子で目を見開き、隣に座って居た光秀が金色のそれを軽く瞬かせる。

「おやおや…これはこれは…」
「凄い、さすがは秀吉さんだ。でもどちらかというと、千利休要素強めな気がする」
「な、何なんだこの派手派手しい食い物は…」

隣で秀吉のパフェを前に、佐助が眼鏡のブリッジを軽く押し上げた。手にしていたスプーンでオレンジ味のソフトクリームを食べながら、もはや感心しきりな様子でそれを見つめる。ひくりと片頬を引き攣らせた秀吉に対して、基本的に歯に衣着せぬ物言いをする幸村が双眸をぱちりと瞬かせながら、かなりばっさりと告げた。

「その前にそれ、食えるのか？」
「大丈夫、食べられないものを出すお店の方が逆に珍しいから…」

凪が苦笑してフォローを入れると、複雑な表情の秀吉が頷く。【豊臣秀吉さんぱふぇ】は、シャインマスカットをメインとしているらしいが、ここまでのインパクトを与えるのは最下層と中層にあるフレークと共に食べられるよう、葡萄ソースとヨーグルトソースが混ざり合い、絶妙な層になっているその上。