❁✿✾ 落 花 流 水 小 噺 ✾✿❁︎/イケメン戦国
第1章 武将と五百年後ノープランツアー 前
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「お待たせ致しましたー。【徳川家康さん】お二つです」
「……………」
「あ、ひとつは俺です。ありがとうございます」
三途の川ドリンクバー事件の後、暫し談笑していた面々の元へ程無くして、着物にエプロン姿の女性店員が、トレーへ二つのパフェを乗せてやって来た。中サイズのパフェグラスをひとつは家康の方へ、もう一つを自ら手を挙げて自己主張した佐助の元へ置き、スプーンとフォーク等の一式を置いた後、一礼して店員が去って行く。家康はふと半眼になって隣のテーブルに座っている佐助の方へ翡翠の眸を流した。
「何であんたが同じもの頼んでるんだよ」
「ここはやはり、推しメンを頼むのが最も最善な選択だと思ったので」
「ほう…佐助殿はやはり家康を好いているという事か」
「凄く寒気のする言い方止めてくれませんか」
硬く冷たい声で文句を述べた家康に、佐助が真面目な無表情の中へほんのりと喜色を滲ませて告げる。最初こそ上司に操を立てて上杉謙信さんぱふぇを頼むかと考えていた佐助だったが、これを逃せば二度と機会などないかもしれないと考えを改め、忠誠心よりも推しへの純粋な愛(変な意味ではない)を選んだのだった。光秀が何処か面白そうに相槌を打ち、くつくつと低く笑う。揶揄めいた含みしかない物言いを耳にし、家康があからさまに顔を顰めた。
「ていうか、徳川家康さん可愛いね…!」
「分かるー!何だろ、やっぱり一般的にはたぬきのイメージなのかな」
「俺の何処にたぬきの要素があるのかさっぱり分からないんだけど」
凪が家康の前に置かれた【徳川家康さんぱふぇ】を見て感嘆の声を上げる。徳川家康さんは柑橘系のパフェらしく、生クリームとオレンジムースの層がパフェグラスの中で明るく夏らしい彩りを見せていた。トップ部分には薄っすらとオレンジがかった色のソフトクリームが乗り、その正面には三つ葉葵紋を象ったチョコレートが飾られている。後ろにはたぬきの尻尾のような模様のチョコが刺さっていて、周りには黄色い菊を象ったチョコが飾りのように置かれていた。