第2章 ビサイド島
近くで見るとひしひしと感じることができる。
強大な力、魔力。
人が太刀打ちできるものではない___
圧倒的な存在であるということを痛感する。
「こんなものに、あの人たちは立ち向かっていったのね…」
すると急に船員2人がそれぞれのワイヤーフックを手に取り構えているではないか。
「そりゃワイヤーフックだろーがっ!そんなもん撃ち込んでどうするよ!船ごと海に引きずりこまれるぞ!」
ワッカの言う通りだ。
そんなことをすればユウナはおろか、この船に乗っている全員が危険になる。それも分かってやるのだろうか。
「『シン』はキーリカに向かっている!あいつの注意を引きつけたい!」
「キーリカにはオレ達の家族が!召喚士様、お許しを!」
そんなこと言われたら心優しいユウナは断れないだろう。
ユウナは船員の方をみて了承のうなずきをした。
「待てよ!本気かよ!」
ユウナの返事に納得のいかないワッカが叫ぶが、一刻の猶予もない。
船員達はワッカの制止の声には耳を貸さず、ワイヤーフックを『シン』に撃ち込む。
それは見事に『シン』の背ビレに突き刺さったが、その勢いは止まらなかった。
予想していた通り船ごと『シン』に引っ張られ、船内に悲鳴が響き渡る。
バランスを保とうと身を低くした時だった。
目の前に耳障りな羽音が響く。
___『シン』のコケラだ。
「ファイア!」
私はすぐに魔法でコケラを撃ち落としていく。
ティーダや他の皆もコケラ達に応戦しようとするが、コケラは倒しても意味がない。
『シン』本体を叩かねば、この場は乗り切れない。