第9章 幻光河
北岸に着き、私たちはシパーフから降りた。
私はそれまで羽織っていたアーロンの上着を脱ぎ、持ち主へと返す。
「ありがとうね。おかげで風邪ひかなかったわ」
「もういいのか?」
「さっきファイアで乾かしたから平気よ。あ、あなたの服もちゃんと乾かしてるわよ?」
こういうときに黒魔法は非常に便利である。
昔はよくスフィアの素材探しで服をよく濡らしていたのでこういう対処は慣れっこだ。
「…すまん」
「え?」
「お前が水の中に引きずり込まれたとき、俺は助けに行けなかった」
「…大丈夫よ。伝説のガード様でも泳ぎは苦手だもんね?」
軽く冗談でそう返すと、機嫌を損ねたのか先へと進んでしまうアーロン。
…気にしてくれてたんだと思うと少し嬉しかった。
「サーシャ」
背後から聞こえる声に振り向くと、キマリが立っていた。
「どうしたのキマリ」
「キマリはシパーフの上で油断していた。もう二度と油断しない」
何を言うかと思えば先ほどの事を気にしているようだった。
「キマリはユウナを守ってたじゃない。私が油断してただけよ?」
「すまない」
そう謝るキマリに気にしないでと伝えると、私もアーロンの後を追って先へ進んだ。