第9章 幻光河
…苦しい。息がしたいのにできない。
肺に何かがつっかえてるようだ。
すると背中をどんどん叩かれ、それと同時につっかかっていたものが体から飛び出しようやく息が吸える。
それと同時に意識も取り戻し、目を開ける。
「かはっ…!!」
はあはあと息を整えながら周りを見ると、心配そうな皆の顔があった。
私は水中に放り出された後溺れてしまいワッカとティーダが助けてくれたらしい。
「サーシャさん…大丈夫ですか?」
「なんとかね…ユウナは何ともない?」
「大丈夫です」
ユウナの目は今にも泣きそうなぐらい涙をためていた。
よほど心配してくれたのだろうと、彼女の目にたまっている涙を拭ってやる。
「それならよかった…2人とも助けてくれてありがとう」
改めてティーダとワッカにお礼をする。
彼らがいなかったら自分は溺れたままだっただろう。
「だいじょ~ぶかな~?」
シパーフ使いのゆったりとした声が耳に響く。
「すみません!もう大丈夫です!」
「ユウナ!」
「あ、はいっ!」
先ほどの事を忘れてまた立ち上がるものだから、アーロンが座れという意味を込めて名を呼ぶ。
「…とりあえずお前も座れ」
アーロンは私の手を引いてユウナの隣に腰掛けさせる。
そして自身の上着を脱ぎ、私の濡れている服の上から羽織らせる。
「体が冷える。着ていろ」
「でも……」
「こういうときぐらい甘えとけ」
「…ありがとう」
私は素直にアーロンの優しさに甘えることにした。
その緋色の着物はさっきまで彼が着ていたからか、かすかに彼の匂いがしてなんだか抱きしめられている気分になる。
…意識しだしたら急に顔が熱くなってきた。
「シパーフ出発進行~~!」
私の悶々とした気持ちは知らず、シパーフは再び歩き始めた。