第9章 幻光河
「シパーフしゅっぱーつ!」
その合図と共にシパーフが巨体を揺らしながら、幻光河の中へと進んでいく。
向こうの岸まで少し時間がかかるのでその間は束の間の休息だ。
「そうだわ!」
みんながこの場にいるタイミングで新作スフィア紹介をすることにしようと懐に入っているスフィアを取り出す。
「ユウナ!これあげるわ」
「…?また新しいスフィア作ったんですか?」
「そうよ!今回のはね、名付けて『テレポスフィア』!」
ユウナの手の中にあるそれは濃い藍色のもの。
それを見て案の定みんなの頭の上にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいるのが分かる。
「これを持っていると瞬間移動ができるのよ!!
…っていっても実感わかないわよね?」
みんなが同時にうなずいている。ちなみに一番いい反応をしてくれるのはティーダ。
「よし、試しにやってみましょ~ユウナ、そのスフィアが光ったら少しでいいから魔力を込めてくれる?」
分かりました!と元気に返事をしてくれるユウナ。
私は自分の持っている『テレポスフィア』に魔力を込める。
するとユウナの持っている『テレポスフィア』が淡く光始めた。ユウナが言われたとおりに魔力を込めた瞬間、
「あ!!」
たちまちに私がさっきまで居た位置から消えて、ユウナの座っているところに瞬間移動したのだ。
目の前で起こったことにみんな驚きの表情が隠せない。
「す、すっげえ~!!」
「どういうことだ??」
ティーダとワッカが思っていたよりもいい反応をくれるので、思わず胸を張って説明を続ける。
「これがあればユウナがどこにいても飛んでいけるわよ~!」
「サーシャさん、もしかしてこれって…?」
ルール―は身に覚えがあったらしく、質問してくる。
「そう。さいきん召喚士がいなくなる噂をよく聞くでしょ?だからユウナが誘拐されてもすぐに助けに行けるように急遽作ってみたの!」
以前にルカでユウナが誘拐されたときにこういうスフィアがあったらいいなと思い、ずっと前から試作してきたのだ。
さいきんになってようやく実用化できるようになったので、さっそくの出番ということだ。