第9章 幻光河
元気良く返事をしたティーダはワッカとシパーフ乗り場へと向かっていった。
その後に続こうとすればアーロンに片腕を取られ引き止められる。振り返り彼の顔を見るとその目は何かを責めるようだった。
「なに?」
「……何故、あんなことを言った?」
「あんな空気でいたらかわいそうじゃない。ティーダは知らないだけだもの」
無責任なことをいうなと言わんばかりの顔をしてるアーロン。
分かってる、あなたは昔からそういう人だから。
でも彼の明るさは間違いなくユウナの太陽のような存在であり、なるべく消したくなかった。
いつか必ず彼も召喚士の運命を知ることになるだろう。
____だからせめてそれまでは
スピラの理を知らないまま自由に生きて欲しい。
そう思うのは私のワガママなのだろうか
「…サーシャさん」
考え事をしているとユウナが神妙な面持ちで話しかけてきた。
何か言いたげに口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返している彼女の行動に何を言いたいかを察して、ユウナに近付いて頭を撫でる。
「ごめんねユウナ。…あなたを傷つけるつもりはなかったの」
「わかってます…。サーシャさんのおかげで場が和みましたし…」
「…笑って旅をしましょ?彼もきっとそれを望んでる」
優しく頭を撫でる私に、ユウナはかろうじて微笑を返してくれたがきっとそれはやせ我慢のものだ。
そんな顔をさせてしまったことに胸がズキンと痛む。
「ごめんね…」
小さく呟いたその懺悔は彼女の耳には届いていないだろう。