第4章 ルカ
「ここに……?」
ユウナが連れてきてくれたのは、映像スフィアでブリッツ観戦も楽しめるカフェだった。
あの人が本当にここにいるのかと思うと、どうしても緊張してしまう自分がいる。
何しろ10年も待ち焦がれた相手なのだ。
大きく深呼吸し、逸る気持ちを抑えてカフェに入ってみるもそこにアーロンの姿はなかった。
緊張が少しほぐれたが、残念な気持ちが強く残る。
「いないみたいだな…」
「聞いてみよっか」
ユウナとティーダはそれぞれ周りのお客さんに話しかけてアーロンの情報を集め始めた。
私もほかのところで探そうかな…なんて考えていたら、言い争っている怒鳴り声が聞こえた。
その先にいたのは想像もしなかった人物だった。
「キマリ!?」
キマリが2人のロンゾ族の青年に絡まれていたのだ。
彼は目の前の青年たちの嘲笑うかのような声をただ静かに聞いている。
「ちょっと何よあんたたち!」
私はとりあえずキマリと2人のロンゾ族の間に入り込んだ。
目の前のロンゾ族はどちらもキマリよりも大きく、少し身じろぎしたが、息子同然の彼を守るためにもひるんでいられないので態度だけでも威張って見せようと胸を張る。
「なんだお前」
「キマリの保護者みたいなものよ!
2人で1人を相手にするなんて卑怯じゃない?」
「ハハハハハ!キマリ、人間に飼われているのか!無理もない。ビラン大兄にツノを折られてロンゾとしての誇りもない」
「あれは…あんたたちのせいだったのね!?」
10年前。
キマリと出会ったのはマカラーニャの森とベベルの間の道。
ツノを折られ、血を流しているロンゾ族の少年がとぼとぼと歩いていて、その眼には絶望の感情が滲んでいた。
『ロンゾ族はツノの長さで己の強さを示す』
ロンゾ族としての誇りを失ったキマリは故郷のガガゼト山から下山し、死に場所を探しているように私の目には映って____
すぐさま彼を自分の家に連れて帰り手当したのを覚えてる。