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孤独な夜の瞼の裏には...【鬼滅の刃】

第1章 空虚



わたしは、歌舞伎の囃子方として笛を吹く父の元で生まれた。

笛は才能もセンスも大事だ。だから、君たちも好きな事、秀でたものがあればそちらに進めと言われてきた。




わたしはわたしが気味が悪くて嫌いだ。




初めは5歳の頃。

父もそこらの父親のように我が子にも同じののをさせてみたいと思って、わたしに笛を貸したことがある。


わたしはたいそう喜んでその笛を手に取った。

するとその場で、父を驚かせ、喜ぶほど上手く引いて見せた。

"誰も知らない唄"だった。

父は"天性の才能だ"と言って大いに喜んでくれたから、そのことだけだったのならば、わたしは何事もなくその道を進んだのかもしれない。


きっかけは、7つの頃。

『人のために戦いたい』

と言ったわたしはなぜか剣を選んだ。

今思えばなんでそんなことを言ったのか。
でも、その時父は警官か剣道の道でもよかろうと

「やってみたいと思った日が吉日だ」

と母の知り合いの、元、名だたる大名の剣術指南役の血筋という名門道場に連れていかれた。


最初は基礎鍛錬、体力作りからで見込みがあって体力があると称され意気込んでいたし楽しかった。


でも、師範から竹刀を握りなさいと構え方、持ち方を教わると、素振りも絶賛され、

「試しにかかってきなさい。」

と言われた。

「お願いします!」

そういった時、何かがふっと見えて師範が動くのを察知すると


そこからは一瞬の出来事。


スパパパーン


と竹を叩く音が響き渡り、師範は痛みで肩を押さえて唸り声をあげ蹲っていた。


恐怖と気味悪さが込み上げ全身が震えて竹刀を落とした。



師範65歳。子煩悩で優しい人。
大の大人で、剣道は8段だ。


素人の小娘だと思っていた相手に一太刀も出なかった。


師範も驚いていたのだろう。しばらくの沈黙の後震えるわたしを一生懸命なだめてくれた。


一部始終を見ていた門下生たちは一様にざわつき始め、



全身の震えと怖気が治まらず、報せを受けた父が慌てて駆けつけ、おぶわれて帰っていった。



それからは、一部の仲良くなっていた門下生から尊敬の眼差しで見られ、見舞いにも来たけど



ひと月ほど、布団から出れなかった。



あれから長い棒を見るのが嫌で、



剣道の道場は



もう辞めた。




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