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孤独な夜の瞼の裏には...【鬼滅の刃】

第3章 痣の人



「コクシボウ...様?」

聞きなれぬ、ましてや名前とは思えぬ音の羅列で首をかしげていると、少しだけ目を細め雰囲気を緩めた気がした。

「色の黒、死ぬという字、牟は貪るという意を持つ字だ。」
「何かの組織におられる方ですか?」
「.......そう、思っても良い.....。」

そして、黒死牟様の頸と額の対の痣に目が留まった。自分と全く同じもの。

「その痣は.....」

そう尋ねると、手をこちらに伸ばし額に触れた。さらりと滑らかな指がゆっくりと自分の痣の輪郭をなぞっていく。無表情ながらどこか暖かさを感じた。

「私と、同じ痣だ...。”月の痣”。生まれながら、私のような痣を持つ者は初めて見るが、恐らく生まれながら特別な剣術の才がある者だけが持っているものだ。」

剣術、生まれながらの才能、特別と聞いて、身がきゅうっと縮こまり、呼吸が苦しくなる。脳裏に道場での出来事が蘇り震え始めた。

「どうした.....。」

過呼吸を起こして身動きができなくなり苦しくなる。頭の中が真っ白になった。
意味もなく、剣術、特別、生まれながら....と呟きながらガタガタと震えて止まらない。

「おい.....!」

少しだけ荒立った声が頭上に振ると同時に、紫の石畳模様と体温に包まれる。大きな手が背を撫でる感覚も驚く余裕もなく、されるがまま。

「すまぬ....。酷く気に触れてしまったか?」

どうにか落ち着かせようと、顔を覗き見たり、撫でる手を早めたり、抱きしめる力を強めたりするうちに、何故か心地よさと懐かしさが全身を満たして涙が溜まった。

やがて、少しずつ落ち着いてきても、背を撫でる手はゆっくりとなっただけ。心做しか、わたしにかける言葉を探しているようで視界をここには感じなかった。

「ごめんなさい。ただ、自分自身が幼少の頃から気味が悪いのです。笛も5つの頃に突然吹けるようになったし....???」

大きな手の指先を口元に宛がわれ、言葉を遮られた。

「落ち着け。それ以上は、見ての通りなのだろう.....。」
「はい.....。」

疲れたからか、気力がないからか、黒死牟様にされるがまま胸にもたれた。


”何も考えなくていい”


今日初めてあったにもかかわらず、ここ最近それが許せない時間から解き放たれたような安らぎ満たされる。

自然ともう一筋の涙をこぼした。

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