第2章 物の怪と札師
「ハク、相手をしておやり」
小さな狐一匹がどうやって大きな巨人を相手にできると言うのか…と基兼が思っていると、
ヒュンッ!
細いものが巨人へと投げつけられた。
「ぎゃぁぁ!」
巨人が眼を押さえ絶叫した。
投げつけられたと見えたのは、狐の細々とした毛。
それは飛ばした瞬間、針。
それが眼に刺さったのだから、のたうち回る痛みだ。
「斎様、今のうちに」
「ありがとう」
「いいえ」
ハクと呼ばれた白い狐の声が照れている様に聴こえた。
(何だ?この狐…)
基兼は首を傾げ、ハクを見る。
『何よ』
(え?)
『だから、私の顔、じーっと見ちゃって、
何なの?って言ってるの』
(あ、いや…君は斎の事、好きなのかと…)
『当たり前でしょ?
私の主人なんだんだからぁ』
頭の中に話しかけてくるハクに驚いたが、基兼はすぐに順応した。
『主人なんだから』と言いつつ、好意が全面に漏れていた。
(ふーん)
基兼は少々白い眼でハクを見て過ぎた。