第2章 物の怪と札師
「フム……主人は在宅だね。
通してくれないか?
私達は怪しい者でも、凶暴な者でもないよ」
妖しい笑みを湛えて『怪しい者ではない』と言っても『怪しい』としか言いようがないのに。
「かえれ」
言葉を発した。
聴こえたのは頭の中に。
でも、耳に聴こえたように聞こえた。
「遥々きたのでね、はい、帰りますとは言えないんだよね」
ヘラっと笑う斎に、巨人が苛立ったように見えた。
「帰れ、と言った」
「帰らない、と言ったよ」
相変わらず斎はのらりくらりだ。
「帰れぇぇ!」
巨人が跳ね除けるように手を振る。
「おっと…」
「お前っ!」
血の気の多い基兼が刀を抜いて、斬りかかった。
が、
ヒュンッ
刀か空を切った音を立てただけ。
「?」
「無駄だよ、基兼。
それは式神だ。
闘うなら、コッチだよ」
言うと、斎は懐から一枚の紙を取り出し
掌でパン!と叩いた。
⁉︎と思っている間に、目の前の巨人の前に小さな狐が現れて浮遊する。