• テキストサイズ

物の怪の札

第3章 二話 首が飛ぶ京




あの日、付喪神を祓った斎はーー…。



「基兼…私だ…戻って来い」
(ん…斎の、声?)
自分を呼ぶ、良く知った声。
肌に感じる温かい感触。

(頬に手?)

気持ち良くて、フワフワとした心地になる。
「お前は私のモノだ…基兼…」
(斎の?……そうか…そうだ…俺は……)

手ではない温かく柔らかな物が頬に触れた。

(?)

そして、唇にも……
「基兼」
もう一度呼ばれて、基兼は眼を開けた。
間近には斎の顔。
「……さ、い…」
自分の頭は斎の膝の上に乗っているのだと、気付く。
女でもおかしくない程に綺麗な顔が、安堵の表情で笑う。
「基兼、他のモノに乗り移られるなんて駄目だよ?」
「……」
「返事がないね?君は私のモノだろう」
基兼は眼を瞬いた。
「何を言っているんだ?斎」
「やだなぁ、冗談だよ。
君が目醒めたかどうか試しただけさ」
フフフフと笑う斎はとても、人とは思えないほど妖艶だった。

(何かに取り憑かれた気がするが…斎が助けてくれたのだろうな)

そう基兼は思ったが、何も言わなかった。


「もう、起きれる。
帰るぞ。俺の後ろに乗れ」
斎の膝から起き上がると、斎の手を引く。
基兼は斎と2人、薄暗い竹林を抜けたのだった。






明後日、基兼は晴明の前に座っていた。
「基兼、頼みがあるんだが……」
「またですか?
斎が嫌がるんですよ…」
「だからお前に頼んでるんじゃないか〜」
「俺だって嫌ですよー」
陰陽寮で押し問答する基兼と晴明。

それを、木の上から小鬼が見て笑っていた。







ー首の飛ぶ京、了ー
/ 40ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp