第3章 二話 首が飛ぶ京
「なかなか、これは…跳ねが…難しい…」
斎の白い直垂が闇に揺れる。
白拍子が舞っているかの様に細波(さざめ)いて揺れる。
月の無い夜に、跳ねる首を追うは狂気の沙汰だ。
(妖しい女のようだ…)
と基兼が思っていると、首を蹴って笑う斎と目が合った。
(!)
間違いなく
(金色の瞳……)
基兼は逸さず、斎の金色に輝く瞳を追う。
その瞳が少しずつ小さくなってゆく。
(斎、何処へゆくっ)
手を伸ばすが、そこから動く事が出来ない。
蹴っていた首はいつの間に髑髏になっていたのか、斎は其れを腕に抱き微笑んでいる。
(斎ッ)
斎は答えない。
代わりに白い直垂に髑髏の真っ黒な空洞の眼が基兼を見ていた。
(斎!其れ離せつ‼︎
……行くなつ!そつちへ行くなッ)
何度呼んでも、何を言っても届いていないようだった。
どんどん向こうへ行く斎の姿が小さくなる。
(斎!
俺を置いて行かないでくれ‼︎
斎ーーーーっっ)
「くっそぉっ!
何で進めないんだっ⁉︎」
苛立ち。
踠き。
腰の刀に無意識に手をやると、刀を抜いた。
(この闇が切れるなら…)
想いを込めて、一歩も動けない闇に向かって刃を振るった。
ヒュッ、ヒュッ
空気を切り裂く細い音。
額に汗が滲む程何度も……
(頼むっ!闇を開けッッ!)
強く願って空を切ったその一振りが、
カッ‼︎と光りを放って斎の消えて行った闇にぶつかった。
その瞬間、
光りは拡大し、闇が光りに包まれた。
「斎ーーっ」