• テキストサイズ

物の怪の札

第3章 二話 首が飛ぶ京




そんな人が斎と口を塞がれた基兼の前を歩いて過ぎる。

基兼は眼だけでその人、
女だろう人を追った。

(まだ、来る)

右手の辻向こうから似たような男、女、老人
童が歩いてくる。

(なん、なんだ…)

物珍しい、怖いもの見たさ、
眼が離せないでいた。

(気をつけろ、眼が合うと引き摺られる)
耳元に斎が囁いた。

(え?)

音もなく歩いて行く人々。
見れば、

(足が、ない⁉︎)




「行った様だ」
「はぁぁぁー」
どのくらい息を詰めて、
基兼は詰めさせられていた、か。
ようやく、息を口で大きく吸った。



「斎、さっきのは…」
「屍人だ」
「怨霊が出るってのは本当だったのか」
「怨霊ではない。
ただの迷い人だ。
怨念などない、この世に未練もない、
死んだ事もわからない。
だから何処に行けば良いのかもわからないから、彷徨っているんだ」
斎の声音は普段通り飄々としている。
哀れも同情もない。
「斎、祓わないのか?」
「何故?悪い事をしているわけでもないのだ、祓う理由がない」
「それはそうだが……行き場もなくて彷徨ってるんだぞ?可哀想だろ」
「死んだとも思ってないのに、態々、「お前は死んだ」と教えてやる方が可哀想ではないか」
「そんな、殺生な…」
「私は殺生などしてないが?ククク」
斎の言っていることが基兼には時々分からなくなることがあった。






/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp